ニナ・ザリナさん:Wings for Life World Run女王の変化
ニナ・ザリナさんは過去2回のWings for Life World Runで60km以上を走った唯一の女性ランナーです。そのため、走れない人たちのために走るグローバルチャリティラン10周年を祝う今年、彼女が自己ベスト更新を目標に設定していることを予想する人がいるかもしれません。ですが、現在36歳のザリナさんにとって2023年は少し違います。今年はひとりで走らないのです。
ザリナさんはWings for Life World Runのグローバルチャンピオンに4回輝いた実績を持っており、これまでの合計走行距離は224kmです。ですので、ザリナさんが現時点でのWings for Life World Run女王であることに誰も異論はないでしょう。
ですが、ザリナさんにとって今年のWings for Life World Runは少し違います。このイベントは脊髄損傷の治療法発見を支援するグローバルムーブメントであるため、突き詰めればひとりで走る人はいないのですが、ザリナさんはまた少し違った意味でひとりでは走りません。 彼女と夫のマックス・ウスビアンさんの間に第1子が誕生する予定なのです。
あなたの生活は大きく変化していますが、変化への対応に苦労していますか?
ニナ・ザリナ・ウスビアン:間違いなく、今年の私のランニングシーズンはいつもとはかなり異なると思います。嬉しいことに9月に男の子が生まれる予定だからです。 私は昔からキャリアよりも家族を大切にしてきたので、今回の変化は想定内でした。ですので、変化によって生活が振り回されることはないと思います。むしろ生活に新しくてエキサイティングな側面が加わるでしょう。
身体的な変化はいかがでしょう?
2つの大きなチャレンジに直面しています。睡眠と体重です。最初の3ヶ月は2時間おきに目が覚めてしまいました。今は良くなっていますが、それでもプロランナーとしての私の睡眠ルーティンからはかけ離れています。この影響で以前よりもかなり疲れやすくなっていますね。1週間ごとに体重が増え、スピードが落ちています。トレーニングウィークを完了したあとに、進化ではなく後退している自分に気づき、それに喜ぶというのはどうにも奇妙な感じです!
ここ最近のトレーニングルーティンはどのように変化しましたか?
昨シーズンの大事なマラソンレースの1週間前に妊娠していることが分かったので、フィットネスレベルが最高の状態で産休に入りました。それ以来、毎週走る距離を少しずつ減らしていき、ピラティスとストレッチをメニューに加えました。あと少しでランニングからウォーキングやハイキングへ切り替える予定です。
Wings for Life World Run 2023の目標を教えてください。
友人や地元のFounders Running Clubの仲間と一緒にサンフランシスコで走る予定です。ゴールデンゲートブリッジで日の出を眺め、Wings for Life World Run 10周年を祝いたいと思います。私の目標は、Wings for Life World Runの素晴らしさをローカルランナーの皆さんにアピールし、今後のカリフォルニア州でのアプリランイベントの基盤を築くことです。
あなたの中で一番思い出に残っているレースを教えてください。
私の中ではすべてのWings for Life World Runが特別です。ジョージア・カヘティで初参加した2018年は、大規模なインターナショナルレースでの初優勝になりました。今年、またカヘティでフラッグシップランが開催されることをとても嬉しく思っています。次の2019年は激しい優勝争いが展開されましたし、望外の優勝となりました。この優勝が私にプロランナーへの道を開いてくれました。パンデミックの2020年は、Wings for Life World Runが最も重要なレースになりました。難しくて不確かなときを迎えていた多くのランナーたちをひとつにまとめてくれました。世界最大のインターナショナルレースで最初のチャンピオンになれるというのは本当に光栄なことです。2021年は私のベストイヤーになりましたが、実はスタート前にモリー・サイデルさん (米国代表長距離ランナー)とレースすることとても恐れていて、緊張していました。ですので、スタートからかなりのペースで飛ばして、45km地点まで夫のマックスに彼女がレースしているかどうか何回も訊ねました。2022年はロサンゼルスで走ることにしました。早朝のスタートでコースもシンプルではないのでコンディションは厄介でしたが、2年間のバーチャルレースのあとにWings for Life World Runのローカルチームのホームグラウンドで走ることが私の中ではより重要でした。彼らの大きな支えがあったことで、このレースは私の人生で最も記憶に残る経験のひとつになりました。
Wings for Life World Runが特別な理由を教えてください。
個人の成績ではなく、それぞれの努力でお互いを助け合うことを重視している希少なレースだと思います。
またすぐに本格的なトレーニングを再開させる予定ですか?
先のことを考えるのは難しいですね。私たち夫婦の意識は息子へ向かうと思うので。トレーニングルーティンのレベルをある程度保ちながら、リカバリーしていければ良いなと思っています。ベビーカーはもう決めましたよ。
出産後に出場するレースはもう決まっていますか?
そうですね。ヒューストンマラソンとボストンマラソンの出場登録を来年にずらしましたし、2024年2月にはオリンピックのマラソン米国代表選考レースが開催されます。Wings for Life World Runは毎年私の予定に組み込まれています。 正直に話しますと、次の2回のオリンピックに向けた長期的なプランをすでに立てています。
息子さんもランナーにしたいですか?
スポーツはやってもらいたいと思いますが、どのスポーツにするかは本人が決めることです。スポーツは人生の大きな助けになりますし、健康な身体や信頼できる友人などプライスレスな恩恵が得られます。
ランニングから学んだ教訓の中で母親になる準備に役立ったものはありますか?
我慢ですかね。あとは落ち着いて毎日同じことを繰り返すことです。
息子さんに伝えたいことはありますか?
"夢を大きく持つ" "諦めない" "自分の道は自分で選ぶ" "しっかり取り組む" 。あとは "結果や報酬がすぐに手に入ることを期待しない" ですね。
インタビュー:Michi Reichelt
ニナ・ザリナ・ウスビアン
- 出生: 1987年3月17日モスクワ生まれ
- 学歴: コンピューターサイエンスおよび応用数学の修士課程修了
- 初マラソン: 2012年
- ハーフマラソンPB: 1分15秒54
- マラソンPB: 2時間34分19秒
- Wings for Life World Run: 優勝(2019/2020/2021/2022)